お知らせ

入学式 式辞

 

桜の季節もあっという間に過ぎ去り、本校の木々にも新しい芽が出てきました。そして、いま本校に、高校1年生240人、附属中1年生40人のキラキラした新しい芽を迎えることができることを心よりうれしく思っています。4月よりマスクのルールも個人の判断となり、ようやく青春が戻ってきました。本日は、座席の間隔を開けるために保護者の皆様の参加が1名ずつとなってしまったことは誠に申し訳なく思っています。一方で、5月3日に行われる下妻一高との部活動対抗戦、定期戦は本校で有観客で行います。6月には本校の文化祭にあたる亀陵祭を一般公開します。どちらの行事も生徒による実行委員会が、自分たちが楽しむだけでなく観る人にどう楽しんでもらうか、をテーマに企画を立てています。新入生の皆さんも大いに参加してください。

 

さて、突然ですが、みなさんが大人になって生きる未来は、正解がない未来だと言われています。いまから10年前、ダボス会議という世界のトップリーダーが集まる会議でこんな報告がありました。「2013年に小学校に入学する子供たちの65%が、現時点では存在しない完全に新たな職種、仕事につくことになる」と。まさに正解がない未来を象徴する報告です。そして2013年に小学校に入学した子供たちはいま高校2年生です。みなさんより先輩です。その人たちが社会に出るときには、これまでなかったような仕事に就く可能性が65%なんです。本当でしょうか?

 

それがどうやら現実になりそうなんです。みなさんは最近話題のChatGPTは知っていますか?もう触ってみましたか?まだの人は調べてぜひ試してください。驚きの未来がそこにはあります。ChatGPTはジェネレーティブAIというAIの一種で、ジェネレーティブというのはものを産み出すという意味です。AIに文章で正確な指示を出せば、自然な文章で答えてくれます。たとえば、「あなたは水海道一高という学校の校長です。入学式で正解のない未来をテーマにした式辞を書いてください。」という指示をAIに出すとスラスラと文章を考えてくれるのです。これでもう長くてつまらない話をする校長という仕事がひとつなくなります。また、プログラミング教育がこれからは大事だ、と日本政府が言い出して「情報」という新しい教科ができましたが、ChatGPTにプログラムを書いてと言えば書いてくれる時代が突然やってきました。これでプログラマーという仕事がなくなるかもしれません。実際は、プログラマーがChatGPTを優秀なアシスタントとして活用するようになることが予想されています。将棋の藤井聡太さんがAIを使って自分のレベルアップを図っているようなイメージでしょうか。その他、ジェネレーティブAIは文章だけでなく、画像や動画だってつくってくれます。これによりたくさんの職業がなくなり、新たな仕事が生まれるというのは大いにありうる話なのです。

 

いずれにしろ、みなさんはAIが存在する未来を生きます。シンギュラリティというAIが人間の知能を追い越すことが2045年ごろには起こると言われ、ChatGPTの登場でそれが早まるとも言われています。これからはAIを使いこなす側になるのか、AIに使われる側になるのかで未来が大きく変わってきます。AIを使いこなすには、国語、英語といった言語能力がますます重要となります。AIとコミュニケーションができなければ何も始まりません。さらにその文章が論理的である必要があります。ここで数学的な思考が必要になります。そのうえで異なるものを結びつけて新しい価値を生み出すクリエーティブな能力が必要です。クリエーティブな能力はどれだけいろいろな面白いことに触れて吸収してきたか、その出会いの質と量と、そこをきっかけに自ら掘り下げる探究力が勝負どころとなります。みながAIを優秀なアシスタントにして、藤井聡太のクリエーティブな一手を生み出さなければならないのです。

 

学校教育は、生徒が社会に出たときに通用するための能力を逆算して提供する必要があります。そして未来は大きく激しく変わっていきます。コミュニケーション能力、論理的思考といった変わらない基礎的な部分を鍛えるとともに、本校では、クリエーティブな能力を身につけるために、海高式探究プログラムというオリジナルなプログラムを実績のある教育ベンチャー5社と共同開発しました。今年度からはじまります。楽しみにしていてください。さらに海高クリエーティブスクールという放課後にクリエーティブなゲストを招いたトークイベントも定期的に開催します。ここまで述べてきたような正解のない未来に、学校も先手を打って、みなさんのためのジャンプ台になります。

 

ただ、勘違いしないでください。ジャンプ台を使ってジャンプするのはみなさん自身です。学校が未来に連れて行ってくれるわけではありません。未来を切り拓くのはみなさん自身なのです。

 

今日は少し難しい話をしたかもしれません。この原稿は学校ホームページにも掲載予定ですので、改めて読んでみてください。たぶんChatGPTがつくった文章よりはちょっとはましなはずです。

 

それではみなさん、ジャンプする準備はオーケーですか?正解のない未来は、正解をつくるチャンスに満ちあふれた未来です。水海道一高でたくさんの経験をして、どこまでも高く飛んでいってください。